

『深秘録と紺珠伝 考察&予想』
どうも皆様、東方三次創作を手掛けるサークル「夢想吟遊詩人」の航海長です。
この文章は、主に『東方深秘録』と『東方紺珠伝』の考察と予想について記したもの。
多量のネタバレを含みますので、どうぞご注意下さい。
航海長の「考察&予想」が正しいか否か。それは、『東方紺珠伝』完成版の発表を待たねばなりません。
もしかすると、全くの大外れとなるのかも知れません。しかし、残念ながら外れてしまったとしても、
皆様が作品を理解するための一助となることが出来れば幸いです。
これは、非常に広範な分野に及ぶ情報を詰め込んだ、言わば“ごった煮”。
東方のみならず、世界の歴史や、多様な物の考え方なども併せて紹介しております。
皆様の「知と教養の領域」が広がるかも知れません。
それでは、『深秘録と紺珠伝 考察&予想』を、深秘録や紺珠伝のBGMを聴きながら最後まで
ごゆっくりとお楽しみ下さい。
【目次】
考察&予想⑤ 浄化と一人の狂人
考察&予想⑥ 完全無欠!アドルフ・ヒトラー
考察&予想⑦ ニャルラトホテプという名の“餅”
考察&予想⑧ まとめ、残された謎
①はじめに
2015年5月10日、「第12回博霊神社例大祭」が開催されたこの日。
東方クラスタ界に核爆弾が投下されました。
「東方Project」の第14,5作目として発表された弾幕アクションゲーム
『東方深秘録 ~ Urban Legend in Limbo.』
に、秘封倶楽部の初代会長を名乗る、宇佐見菫子なる人物が登場したのです
彼女は、7種類全てを集めると自動で結界を破壊するようにプログラムされた「オカルトボール」なる
ものをツールとして使い、幻想郷の住人と対面し、最後には結界を破壊し幻想郷の存在を外の世界に
向けて暴くことを目指していました。相当、ヤバいボスであったと言えるでしょう。
菫子の登場は、秘封クラスタ界をも恐怖に陥れました。二次創作に非常に大きな影響が及ぶことが懸念
されるからです。彼女と宇佐見蓮子との関係などについても、未だ多くのことが謎のままです。
「幻想郷はメリーの夢の中にのみ存在する架空の世界」という二次設定を始め、いくつもの世界観が
成り立たなくなる恐れがあります。もちろん、新たな二次設定が生まれる可能性も大いに秘めており、
今後の動きは目が離せません。
しかし、東方クラスタ界全体に走った衝撃は、それだけに止まりませんでした。歴代の作品群の中でも、
最大級の謎と期待を孕む作品が、体験版でデビューしたのです。


『東方紺珠伝 ~ Legacy of Lunatic Kingdom.』
「難し過ぎる!」「ボスの格が高過ぎる!」「異変の規模が大き過ぎる!」など、各方面から悲鳴が
上がっています。2015年は「東方Project」にとって大転換の年と言われ始めており、もはや何人たり
とも現実を直視せざるを得ません。ここで一つ、しっかりと考察を加えておきたいと思います。
航海長は『紺珠伝』を、今までになく様々な示唆を含む、非常に興味深い作品だと考えました。
最大のポイントは以下の三つです。
①前作の『深秘録』と併せ、二作品で一つの物語を形成している点。
(伏線だらけだった『儚月抄』も併せて考えると、三作品に跨る壮大な物語となる)
②作品のあらすじやボスたちの零す言葉の端々などに、重大なヒントが散見される点。
③難易度や異変の規模、前作で与えられた衝撃の程度を鑑みるに、もはやラスボスにはどんな奴が
来てもおかしくないと思える点。
また、ボスたちの言葉の中で航海長が特に気になったのが、以下の三つの言葉でした。
「浄化」「一人の狂人」「ルナティック・キングダム」
これらの条件から、荒唐無稽ではあるものの、ある考えがぼんやりと浮かび上がってきました。
笑い飛ばしたくなるようなトンデモ話です。しかし、『深秘録』という作品の登場により、眉唾ものの
怪しげな説でも、有り得ない話ではないと思えるようになったことも事実ではないでしょうか。
そこで航海長は、自分の思うところを忌憚なく述べるため、自身の説を補強する材料を探し求めました。
そして、ようやく人に説明できるくらいのレベルの与太話には出来たと感じたため、こうして
「考察&予想」を執筆した訳です。
ちなみに、『紺珠伝』に関する理解を深めたいのならば、漫画版および小説版の『東方儚月抄』を
素通りする訳には行きません。是非これを機に、もう一度『儚月抄』を読み返してみて下さい。
『紺珠伝』へと繋がる伏線がドンドコ出て来ます。こちらの考察でも、『儚月抄』から重要と思われる
箇所を何度か引用して参ります。
それでは、主に『深秘録』と『紺珠伝』の両作品を考察しながら、徐々に分かり易く説明して参ります。
どうぞ、最後まで根気強くお付き合い下さいませ。
②基本情報の確認
まずは、骨組みとなる8つの基本情報の確認です。より詳しい説明は、他のサイトでも調べられると
思いますのでそちらをどうぞ。
①『深秘録』と『紺珠伝』は、二作品で一つの物語を形成している。
『深秘録』と『紺珠伝』の両作品で、同じ月の都のオカルトボールが登場。どうやらそれが、幻想郷で
都市伝説が蔓延するに当たり、重要な働きをしているらしい。『紺珠伝』においても、「アポロは月に行
っていなかった」という都市伝説が広まっており、未だに『深秘録』の都市伝説騒ぎが継続していると
も言える。

月の都の異変は、『儚月抄』の時点で既にスタートしていた。
当時は読んでもよく理解出来なかったため、ずっと忘れていたのだが、『儚月抄』の時点で月の新興
勢力は動き始めていたのだ。アポロが立てた人間の旗を何とかして引き抜いたり、「地上からの侵入者
の痕跡」は永琳たちによる月の都への逆襲だという嘘の噂を流したり、とにかく策謀が大好きな連中が
当時から蠢いていたのである。(儚月抄は黒歴史、って何ぞ)
③菫子は『深秘録』の異変の黒幕ではなく、操られていただけ。
幻想郷に月の都のオカルトボールを紛れ込ませた、月の都の新興勢力、或いは真の黒幕。こいつらが、
二作品に渡って様々なことを画策しているのはほぼ確実。菫子ですら誰かに操られていたということは、
霊夢も気付いていた。しかし、『深秘録』では真の黒幕の正体は明らかにされなかった。
④月の都のオカルトボールが正常に発動すれば、月の都と幻想郷は直通になっていた。
結局、これは霊夢によって阻止された。しかしその後、『紺珠伝』において幻想郷と月の都が夢で
繋がっていることに気が付く。どうも、以前から精神世界で繋がっていたらしい。
槐安(かいあん)通路と呼ぶそうだ。
⑤妖怪には認識不能な金属製の蜘蛛、キュリオシティが徘徊している。
通った後では草木が枯れ、霧も消え、何も無い状態となる。また、月から妙な波動が飛んで来ている
らしいのだが、月の変化に敏感なはずの妖怪には、どちらも認識不能。
っていうか、月の話のはずなのに、何故か登場したのは火星探査車?

「浄化」という言葉を盛んに耳にする。しかし、その言葉は多義的。
「浄化」について、霊夢は「嫌な予感がする」と話した。しかし、この言葉には複数の意味が込め
られているようにも思える。清蘭は一度、邪魔者を排除することを「浄化」と呼んだが、彼女や鈴瑚の
言葉を聞いていると、より規模の大きなものにも聞こえてくる。そして、謎の探査機キュリオシティに
より、地上の一切の物を消滅させることもまた「浄化」の一環に入るそうだ。
⑦永琳によれば、異変解決の鍵は人間が握っている。
人間達では、「彼奴」に勝ち目は無い。妖怪には干渉不能だし、自分たちが出て行っては「彼奴」の
思う壺。未来が見えるようになる「紺珠の薬」で人間達を強化し、月の都へ向かわせるしか解決策は
ない、という流れ。
⑧『深秘録』という作品そのものが、紺珠伝へと続く一つの巨大な伏線。
2015年は「東方Project」にとって大転換の年。『深秘録』で宇佐見菫子なる者が登場してしまった
以上、こうも思えて来る。
「もう次回作にどんなラスボスが来てもおかしくないし、何が起きても驚きはしない」
このような状況を創り出すことに、ZUNは成功したのだ。我々は、次回作で何が起きようとも、
受け入れることが出来るように調教されてしまったのである!
③考察開始!
前章で紹介した情報を基に、徐々に考察&予想を進めて参ります。
まずは、簡単な考察だけで導くことの出来る情報について、8つ提示していきましょう。
①『深秘録』と『紺珠伝』、二作品の黒幕(=「彼奴」?)は同一人物。
永琳が「彼奴」と呼ぶ者が暗躍しているようだ。『深秘録』と『紺珠伝』の両作品で妙な噂が広め
られている点を鑑みるに、黒幕は月の都にいる同一人物だと思われる。しかし、二作品に跨って黒幕と
なったラスボスは、未だかつて見たことがない。(守矢のことは言わないでおいてやる)
②真の黒幕は、噂や都市伝説の天才的な使い手。
『儚月抄』『深秘録』『紺珠伝』の三作品に共通することとして、噂や都市伝説が、月の都の新興勢力に
よって実に上手く利用されていることが挙げられる。噂や都市伝説を使いこなす能力が、「彼奴」など
月の都の新興勢力にはあるのだろう。もしかすると、噂や都市伝説と深い関わりがある元ネタから
引っ張ってきたのかも。

「彼奴」=「一人の狂人」とは限らない。
これは航海長も血迷って勘違いしていたことだが、「彼奴」=「一人の狂人」である必要など何処にも
無い。永琳はただ、「彼奴」について一言、言及しただけ。それが「一人の狂人」だ、などとは言って
いない。勝手にこちらが、そう思い込んでいただけなのかも知れないのだ!
④Limbo→監獄という意味がある。
小説版『儚月抄』にも書かれていたことだが、月から見れば地上は監獄なのだという。『深秘録』の
英語の副題でLimboという単語が使われていたのは、この作品において、月の都の一勢力が背後に
控えていたことを暗示しているからではないか。
⑤Lunatic Kingdom→狂気の王国と訳せる。
鈴瑚は、月の都を”ルナティック・キングダム”と呼び、狂った極楽浄土と称した。これを加味すると、
”ルナティック・キングダム”を「狂気の王国」と訳すことも可能となる。すると、今回の作品の副題
は「狂気の王国の遺物」となるのだ。
⑥未来が見えること→完全無欠であるということ?
人間たちは、「紺珠の薬」を受け取って完全無欠モードになることで、「彼奴」などに対抗出来るように
なるそうだ。するってぇと、「彼奴」などの相手方は、常態的に完全無欠で、何時でも未来が見えると
いうことだろうか?
⑦生身でいられる夢? 実体ある物も通過できる夢?
ドレミーによれば、主人公たちは夢で繋がる「幻想郷~月の都」間の通路に、生身で居るらしい。
秘封作品の『夢違科学世紀』や『伊弉諾物質』で、メリーが夢の中の実体ある物を持ち帰ったことと
関連しているのか。そう言えば、菫子も夢の中で幻想郷を訪れることが出来るようになったが、あれも
肉体を伴ってのことだった。偶然の一致だろうか。
⑧アポロが立てた旗を引きぬくことには、重大な意味があるらしい。
漫画版『儚月抄』の序盤で、人間の旗は既に何者かの手によって抜かれていた。それを聞いた途端、
輝夜は「月面戦争が始まる」と理解している。旗が抜かれるというのは、戦いの狼煙が上がることを
意味しているのだ。そして『紺珠伝』では、「アポロは月に行っていなかった」という都市伝説が
流行っている。月の都の新興勢力は、どうしてそこまでアポロにこだわるのだろうか。

・・・やはり、最近の二作品は難解です。これだけ時間をかけても、未解決の謎が多過ぎます。
真の黒幕の正体然り、「狂気の王国」の意味然り・・・。
なので、簡単そうな問題から予想し始めちゃいましょう。
ここから先は、多くの推測が含まれます。確実性はありませんので、どうぞ悪しからず。
④キュリオシティ、月の波動、“良い働きをした地上人”について
≪キュリオシティとは? 月の波動とは?≫
まず、月の都の話なのに何故、突然、火星探査車が登場するのか。しかも、通った跡では草木が枯れ、
霧は消え、何も無い状態となってしまうとはどういうことか。この謎を解いた可能性のある賢人が、
ある考察サイトにいました。彼の書き込みを、そのまま引用してみましょう。
>山彦が自然現象だという話で妖怪山彦が減ったというのと同様に、探査機が幻想を消し去る、浄化
するということかもしれぬ。月の勢力は科学の象徴たる探査機をそのようにして利用しているのでは。
見事な考察です。確かに、火星探査の歴史とは、火星の無生物ぶりが次々と明らかになっていった歴史
でもあるのです。
かつて天文学者たちは、火星には高度な知能を持った火星人がいて、火星を望遠鏡で覗き見た時に目に
映る黒い筋は、彼らが造った運河であるなどと考えていました。しかし、好奇心(キュリオシティ)を
胸に観測に挑むにつれ、火星は火星人どころか、微生物ですら存在が危ぶまれるまでに「無生物」で
あると明らかになってきたのです。
これを踏まえると、以下の予想が出来ます。
●火星探査により火星が「無生物」だと明らかになってきた経緯を利用し、幻想郷のあらゆる物を消滅
させるために、曰く付きのキュリオシティとほぼ同形の探査車を利用している。幻想郷を何も無い
状態とすることが、「浄化」の一つである。

恐ろしい話です。このままキュリオシティが活動を続ければ、妖怪たちが何も認識出来ないうちに
幻想郷は、不毛で無生物の、何も無い大地へと変えられてしまうのです。
しかし、ここで一つ疑問が浮かび上がります。妖怪たちが、何故キュリオシティを認識出来ないのか、
という問題です。また、妖怪に認識出来ないものと言えば、月から飛来する波動のこともあります。
例えば『永夜抄』では、月が完全な満月にならなくなっただけでも、月の光に依存する妖怪たちに
とっては死活問題でした。なのに、月の変化に敏感なはず妖怪たちが、月の波動には全く気付いて
いない・・・。
ただ、2面道中曲「湖は浄めの月光を映して」の説明書きによれば、一部の者は気付いているという
ことでした。一部の者というのは、おそらく、月の都の新興勢力が「悪者」だとレッテルを貼って、
何とか誘い出そうと画策している永琳たちのことを指すのでしょう。
となると、次のような予想が出来ます。
●月の都の新興勢力が誘い出したいのは永琳たちであり、妖怪たちが異変に気付いてしまうのは逆に
厄介。キュリオシティを破壊し、最悪、月の都に攻め込んで来る可能性もある。そこで、月の変化に
敏感な彼らには、特殊な月の波動を浴びせ、認識も干渉もさせないようにしている。
不用意に敵を増やさず、捕えたい相手だけを確実に仕留めようというのです。敵方は、とても頭の
切れる連中だと言えそうです。
≪「浄化」の過程で、良い働きをした地上人って?≫
鈴瑚によれば、「地上人は浄化の過程において非常に良い働きをしてくれた」らしいのです。地上人と
いうのが、単数形なのか複数形なのかは分かりませんが、それぞれ考察してみましょう。
まず、単数形について。こう予想します。
●紺珠伝に、中ボスとして、または名前だけ、もう一度くらいは宇佐見菫子が出てくる可能性があり
ます。月の都を見せてやるから手伝え、と言えばホイホイ応じそうなくらい、彼女は「クソゲス」
ではありませんか!地上人とは、彼女のことです。
幻想郷の結界を破壊し、その存在を外の世界へ暴こうとしていた彼女です。大抵のことは意に介さない
でしょう。現に、7種類のオカルトボールを幻想郷に投下したのは、他ならぬ彼女自身でした。
次に、複数形について。こう予想します。
●幻想郷または外の世界で、「アポロは月に行っていなかった」という都市伝説を実際に広めたのは、
他ならぬ幻想郷の人々、そして外の世界の人々です。それについての言及かも知れません。都市伝説
が広まるのは、それほど重要なことなのかも。地上人とは、不特定多数の人々のことです。
つまり、どちらにせよ月の都の新興勢力は、地上人を意のままに操りながら彼らの野望である月の都の
乗っ取りを図っているということ。地上人は、ただ振り回されるばかりなのです。
いよいよ、最も皆さんが知りたいであろう「浄化」と「一人の狂人」についての、考察と予想に移って
参ります。(「彼奴」はもう少し後)
⑤浄化と一人の狂人
≪だから「浄化」って何?≫
この言葉は多義的で、明確に「これだ!」と説明するのは難しいようにも思えます。清蘭のように、
二つの異なる行動をまとめて「浄化」と呼ぶこともあるのです。
例えば、最初に清蘭と遭遇した時、彼女の言う「浄化」とは、邪魔する者を排除することを指して
いました。「好戦的な地上人を浄化する」と言っているのです。
邪魔者の排除と言えば、永琳たちもその対象みたいです。「悪者」のレッテルを貼り、月の都まで誘い
出して処分しようということでしょう。

しかし、清蘭は同時に「もうすぐ地上は浄化される」という謎めいた言葉も発しています。「浄化」と
いうのは、地上を消滅させることをも意味するそうです。その役割は、キュリオシティが果たしている
ように見えます。
一連の過程を経て、地上は「浄化」される。これを踏まえると、「浄化」という言葉の意味は、以下の
二つに集約されます。
●地上のあらゆる物を消滅させること。
●月の都の新興勢力が計画を遂行する際の邪魔者を排除すること。
これほど狂った計画に巻き込まれるなど、理不尽にも程があります。しかし、狂気に陥った者は、
決まって、どうしてこんなことが出来るのか、と言いたくなるような悪事に平気で手を染めたりする
ものです。
「浄化」について、ある考察サイトでは、こんな途轍もない意見も出ました。
>侵略先の生物文化もろとも全て滅ぼして自分色に染め上げることだよ
プールで例えると水を抜いて綺麗に掃除して綺麗な水を流すような事
別の意味で言えば自分達にとって都合の良い世界を作る事
最悪な意味でいうと原住民皆殺しにして自分達が移住する
『紺珠伝』は、幻想郷が始まって以来の、最大級の危機と言えるかも知れません。もし、上記の考察が
本当なら、幻想郷が植民地化されるかも知れないのです。
≪じゃあ、「一人の狂人」って誰?≫
考察サイトから、賢明なる同志たちの金言を引用します。
>むしろ綿月は何やってんだよwwww
綿月にもとめられなかったのかその狂人は
なら間違いなく東方史上最強のキャラなんだが
>綿月も能力的にでなく権力的に止められない相手もいるしな
あと、月がおかしいと感じているのは地上に滞在して
地上に興味を持っているリンゴの主観というのがどうなんだろう...
一つ注目すべきは、同じ月の兎でありながら、清蘭と鈴瑚の態度には、かなり大きな差異が見出せると
いうことです。
清蘭は、残念ながら完全に「一人の狂人」の駒です。「一人の狂人」に心酔し、盲目的になっていると
いうことでしょう。積極的に地上の「浄化」に貢献しようとしています。
しかし、鈴瑚には躊躇いがあるようです。一歩引いて物事を見、月の都の豹変を含めて全体を俯瞰して
います。だから、「一人の狂人」に心酔することなく、その人物を狂人と認識することが出来た訳です。
航海長も、頭が良い娘は大好きです。

例えば、ある一つの体制を思い浮かべてみましょう。それが狂気に陥ってしまった場合を想定すると、
体制の中で暮らす人々は、大きく三つの部類に分かれることとなります。
①熱狂するグループ。リーダーに心酔し、盲目的になり、どんな恐ろしいことでもやらかすように
なる。邪魔者は自ら積極的に排除する。清蘭はここ。
②
傍観するグループ。これが圧倒的に多く、世の中の変化などどうでも良いと考える。しかし、
彼らもまた体制に従っており、リーダーの命令には
逆
ら
わ
ない。
③
懐疑
するグループ。圧倒的に
少
なく、
非常
に頭の
切
れる者だったりする。リーダーおよ
び
体制の
狂気に
敏感
で、その
暴走
を止めようと画
策
したり、
逃げ
出したりする。
鈴瑚
はここ。
航海長が最も好きな
タ
イプ。
要
は、
現在
の月の都の
住
人は、上の三つのどれかに
属
しているということです。月の都を
覆
い尽くそう
とする狂気の中で、
皆
がそれ
ぞ
れの思いを
胸
に
蠢
いているのです。
ここまで
聞
いて、こうは思
わ
ないでしょうか。
地上の人間の政治劇みたく
、
馬鹿なことをやっている
な、と!
噂や都市伝説の扱いに長けた新興勢力
に
惑
わ
され、極
楽
浄
土
だった月の都は
乗
っ
取
られた。そして、
連中は
地上を「浄化」する計画
に
着
手する。
その
内実
は「
地上からあらゆる物を消滅させること
」と「
邪魔者を排除すること
」であり、
「一人の
狂人」に心酔した清蘭のような下っ端たちが実行
している
・・・
。
もうお分かりでしょう。こんな
感
じの
馬鹿
な
話
など、
外
の世界なら
枚挙
にいとまが
無
い。
「一人の狂人」とはまるで
、
外の世界のカリスマ独裁者
ではありませんか!
ここまで来てようやく、本
題
に
入
れます! 長かった
・・・
。
さて、ここから
先
は
完全
な
推測
の
域
です。確
実性
も
何
もありません。ただの
与太
話
、
荒唐
無稽
な
ト
ンデモ
話
でしかありません。それでも良
け
れば、どう
ぞ読
み
進
めて下さい。
ボス
たちの言葉の中で航海長が
特
に気になったのは、以下の三つの言葉である、とお伝えしました。
「
浄化
」「
一人の狂人
」「
ルナティック・キングダム
(=
狂気の
王国)
」
また、
≪
じ
ゃ
あ、「一人の狂人」って
誰?≫
の中で考察したように、「一人の狂人」はまるで、
外
の
世界で人々の熱狂的な
支持
を
受
け
る
カ
リ
スマ独裁
者のようでした。
そして、ここまでに出てきた
ポ
イ
ン
トを
並
べて考えてみます。
●
噂
や都
市
伝説の
扱
いに長
け
た月の都の新興勢力の
有
力者たる「一人の狂人」は、永琳などを「悪者」
扱
いすることで人心を
掌握
し、月の都を
乗
っ
取
って体制を
奪
い
取
った。
凄
い
カ
リ
スマ
の
持
ち
主
?
●極
楽
浄
土
だった月の都を「狂気の
王国(=
ル
ナ
ティッ
ク
・
キ
ン
グダ
ム
)
」
へ
と変え、地上を「浄化」
する計画に
着
手した。
●その
内実
は「地上からあらゆる物を消滅させること」と「邪魔者を排除すること」であり、その
先
には「
移
住
」「植民」が
待
っているかも知れない。
●あらゆる計画を
実
行するのは、「一人の狂人」に心酔した清蘭のような者たちである。熱狂している
ので、盲目的になり、どんな恐ろしいことでもやらかす。
●「一人の狂人」は、永琳からもらう
薬
を
飲
まな
け
れば
勝
ち目のない「
完全
無欠
」な
存
在
で、月の都に
とっては新興勢力、つまり新
参
者である。
ここまで
条件
が
揃
うと、
ぼ
んやりとしていた考えがはっきりと
輪郭
を
帯
び
て来ます。
航海長は、
歴
史上に実在した
、
ある一人の男
に
辿
り
着
いたのです。
外
の世界にも、「
完全
無欠
」な「一人の狂人」がいました。圧倒的な
選
民思想に
燃
え、
欧州
に「狂気の
王国
」を
創
り上
げ
、
広
大な
領
域
で民
族
の「浄化」を
企
てました。
政敵
を倒すために、あいつは
国家転
覆
を画
策
している、という
噂
を流して邪魔者を排除し、遂には
国家
を
乗
っ
取
りました。
噂
や都
市
伝説の
天才
的な
使
い手で、人心
掌握術
は人類の
歴史
に
名
を残すほど。彼に心酔した者は、狂気
に陥っているためどんな恐ろしいことでもやらかしました。
大きな戦
争
の
終盤
、自
殺
したと言
わ
れていたものの、都
市
伝説の中では、
南米
もしくは月に
逃げ
たと
さえ
噂
されたその人物。月に
逃げ
たとすれば、月の都にとっては新
参
者と
呼
べる
存
在
・・・
。
そう。都
市
伝説によって
独裁
者に上り
詰
め、都
市
伝説の中で
今
も
生
き
続
け
るあの
男
。
アド
ル
フ
・ヒ
ト
ラ
ーです。